大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)4019号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔爭点〕公職選挙における不在者投票のなし得るために必要な証明書を作成し得る者として公職選挙法施行令第五二条第一項第三号(旧令)の場合は、医師等が掲げられている。そこで医師がこの証明書を該当者を自ら診察しないで作成交付した場合に、これが医師法第二〇条において禁止されている自ら診察しないで診断書を作成交付した行為として処罰されるかどうかが争われている。原審は右証明書を医師法第二〇条の診断書に当らないとして無罪を言い渡している。これに対して検事が控訴して原審の見解の不当なりとし右犯罪の成立を主張している。

〔判旨〕公職選挙法施行令第五二条第一項第三号(但し、昭和二七年政令第三四七号による改正前のもの、以下同じ)第五二条第一項第三号の医師の証明書であつて、その内容が選挙人の病状等医学的判断を必要とするものは、その書面の名称如何にかかわらず、これを医師法第二〇条にいわゆる診断書と見るべきものと解する。けだし、前記医師の証明書は、選挙人が疾病、負傷、姙娠、不具又は産褥にあるため、歩行が著しく困難であることを証明する書面であつて、同令第五二条第一項第三号が医師をして、証明書を作成させる所以のものは、証明書の内容として病状等医学的判断を必要とするものについては、医師をしてその専門的智識、技術、経験等により証明の対象となるべき選挙人を親しく診察せしめた上、その結果についての判断を書面に記載せしめ、もつて、その証明事項について過誤がないことを期しているものと解すべきであり、一方医師法第二〇条にいわゆる診断書とは、医師が特定人に対する診察の結果についての判断を表示し、もつて、その健康上の状態を証明するために作成するものと解すべきものであつて、前者と後者とは、実貭上何等異なるところがないからである、そして医師法第二〇条本文は医師が自ら診察をしないで診断書を交付することを禁止しており、同法第三三条はこれに違反した場合の罰則を定めているのであるから、いやしくも、医師が発行すべき前記証明書中その記載内容が選挙人の病状等医学的判断にわたるものは、その作成にあたり、その証明の対象となるべき選挙人を診察しなければならないことは勿論であろう。ところで、起訴状添附の別紙記載のA外三四名に対する各証明書の内容を検討してみると、各証明書は、いずれもその内容が同人等の病状等を記載したものであるから、これを医師法第二〇条所定の診断書と認むべきものであり、右各証明書は、いずれも同条にいわゆる診断書でないことを前提として被告人に無罪を言い渡した原判決には、刑訴法第三八〇条にいわゆる法令の適用に誤があつてその誤が判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、爾余の点について按ずるまでもなく、同法第三九七条に則り、原判決を破棄し、同法第四〇〇条本文に則り、本件を原審に差し戻すこととする。

〔説明〕この問題は異論もあるようであるが当庁としては判例として確立しているとみていいだろう。即ち本誌第二四号第二五事件として掲げた第六刑事部判決(二七(う)第一、八九六号、二七・九・三判決)及び第九刑事部判決(二七(う)第二七八三号、二七・一二・一三判決)がこれである。

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